最高裁判所第一小法廷 昭和37(あ)863 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人島田武夫の上告趣意第一点ないし第三点は事実誤認の主張であつて、刑訴
四〇五条の上告理由に当らない。
同第四点は判例違反をいうが、実質は事実誤認を前提とする判例違反の主張、換
言すれば原判示に副わない事実関係を想定しての判例違反の主張に帰する。そして
所論引用に係る当裁判所判決にいうところの謀議とは、当該犯罪の内容がくまなく
決定されていることを要すとの謂ではなく、その犯罪内容の骨子が特定されなけれ
ばならず且つそれを以て足るという趣旨と解すべきであり、従つてこれを原判示供
与罪に即して言えば、一定範囲の選挙人又は選挙運動者に対して投票又は投票とり
まとめ方を依頼する趣旨で金銭を供与するという謀議さえ整つておれば、その供与
の相手方となるべき具体的人物、配布金額、金員調達の手段等細部の点まで協議さ
れることを必要とする意味ではないのである。この意味において、所論大審院判例
は前掲当裁判所判決に牴触するものではなく、両者は両立し得るのである。故に所
論は結局原判決竝びに所論各判例の趣旨を正解していないことに由来するものであ
つて、すべて採るを得ない。
弁護人渡辺邦之、同神崎正義の上告趣意第一点は憲法三八条一項違反をいうが、
同法条は威力その他特別の手段を用いて供述する意思のない被告人に供述を余儀な
くすることを禁ずる趣旨であることは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一〇一
〇号、同二四年二月九日大法廷判決刑集三巻二号一四六頁参照)の趣意とするとこ
ろであるから、拘禁中の自白であるからといつて、それだけで、右法条違反の供述
であると断ずることはできず、所論は理由がない。
同第二点は憲法三八条二項違反をいうが、記録に徴するに、所論指摘にかかる被
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告人Aの検察官に対する自白は、その自白に係る事実以外の公訴事実を被疑事実と
して身柄の拘束を受け、起訴されたのち、余罪捜査が継続される間になされたもの
で、当初拘束を受けてから、所論自白がなされるまでの期間は、多くとも四九日間
を越えるものではないことが認められるところ、本件の如く犯罪事実、関係人が多
数に上り、複雑に関連し合つている場合においては、右期間身柄拘束中の自白が不
当に長く抑留又は拘禁された後の自白に当らないこと当裁判所大法廷屡次の判例(
昭和二二年(れ)第三〇号同二三年二月六日判決刑集二巻二号一七頁、昭和二三年
(れ)第四三五号同年一〇月六日判決刑集二巻一一号一二七五頁、昭和二六年(あ)
第一六八八号同三〇年六月二二日判決刑集九巻八号一一八九頁等参照)の趣旨に徴
し明らかであるから、原判決には所論違法、違憲の点はなく、所論は理由がない。
同第三点は憲法三一条違反をいうが、実質は事実誤認、単なる法令違反の主張を
出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
同第四点は所論判例違反をいうが、実質は原判示に副わない事実関係を想定して
の判例違反の主張であり、且つ又所論は所論各判例の趣旨を正解していないものと
いうの外はない。この点については前段弁護人島田武夫の上告趣意第四点について
説示したところをここに引用する。
同第五点は事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないものであつて、刑訴四〇
五条の上告理由に当らない。
また記録を調べても各所論の点につき、同四一一条を適用すべきものとは認めら
れない。
よつて、同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
昭和三七年一二月一三日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫
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裁判官 入 江 俊 郎
裁判官 高 木 常 七
裁判官 斎 藤 朔 郎
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